雇用形態と経済成長に関する新聞記事メモ

2013.10.27日経21面、「経済論壇から」(土居丈朗)より。

企業が非正規労働を増やし、人的資本への投資を停滞させていることにより、生産性上昇が滞り、経済成長を妨げている

 というもの。もと記事は、深尾京司「非正規雇用がどんどん増えて、日本社会は大丈夫なの?」週刊エコノミスト10月29日号32頁だそうです。
週刊エコノミスト 2013年10月29日特大号 - 週刊エコノミスト

 曰く、(非正規労働の増加原因は別のところにあるが)非正規労働者は熟練が蓄積されないため、非正規労働者の増加によって、企業の生産性を低下させている、とのこと。また、製造業での正規と非正規を比較した時に、賃金の差より生産性の差のほうが大きい、即ち非正規はプレミアムを支払われているという指摘がされている。これは、人員調整しやすいことに対するプレミアムとして生産性以上の賃金が支払われているのだが、生産性以上の賃金を支払いながら、人的資本を蓄積できないため、結局企業にとって利点がないのではないか、と。

 また、太田聰一「世界で進む「中間層」の消失 多様な正社員化への取り組みが急務」週刊エコノミスト10月15日号86頁にも言及。

先進国の中間層が担ってきた工場の組立作業や銀行の窓口業務のような定型的な仕事は、機会や情報技術に置き換わることにより失われ、さらにグローバル化で途上国の労働者に代わられてさらに打撃を受けた。そうした中間層の退潮は、日本のみならず先進国共通の現象で、それは北欧のような政府の介入の強い福祉国家でも生じた

 詳細は元記事を見なければいけないでしょうが、中間層の退潮によって労働者の二極化が進んでいることを指摘する内容であろうと思われます。(太田氏の共著書『労働経済学入門』(新版・有斐閣2012年)81-84頁にそのメカニズムについての説明があります。)

 両氏に共通するのは、非正規労働者のキャリアアップの機会が必要であることの認識で、このためには外部労働市場の機能による必要があるとしているように見えます。

 というわけで、新聞記事にあらわれた部分だけを見て大雑把に書きましたが、週刊エコノミストなら学校の図書館にありそうなので、ちょっと拝見してきますかね…