性的表現の自由(6)―都議会

都青少年育成条例、総務委で可決 15日の本会議で成立へ(ITmedia)

 問題をもう一度短く整理してみたい。

(1)「表現行為そのものに対する規制」であること。
 いわゆる「有害図書」も、一応は憲法21条のいう表現の自由の保障の内におかれる。
 表現の内容に関する規制は、内心の自由への規制に直結するものであり、その制限を行うに際しては保護法益との衡量を踏まえた上で最低限に留めなくてはならない。社会的性秩序を理由とした一般的な事前規制は認められない。表現行為の価値の多寡はその芸術性や反社会性によってはかられるものではなく、表現行為に対する規制は、国家がよって立つ市民社会そのものへの攻撃である。
 「有害指定」+「『自主規制をしなければらない』旨の規定」+「行政指導」の組合わせにより、表現行為そのものに対する萎縮効果が極めて大きい。

(2)規制の範囲が不明瞭かつ広範であること。
 「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」とは何かが不明瞭。また、いわゆる「有害図書」と「不健全な青少年」の間の因果関係の不在。
 「刑罰法規」とは、一般に都道府県条例を含む。刑法典だけでなく各都道府県のいわゆる「淫行条例」等も全て刑罰法規(具体的内容は様々)であり、これを規制の範囲に含む。

(3)保護すべき法益と、規制の手段の間に整合性がないこと。
 「青少年の健全な成長」が保護法益であるのに、「出版する行為」そのものに対して規制をかけようとする条例案である。ゾーニングの強化、事情を知った上での青少年への販売に対する罰則など、保護法益に対応した規制がなされておらず、法規として不適切。

 といったところか。なお、「作品に表現した芸術性、社会性などの趣旨をくみ取り、慎重に運用する」という付帯決議は、芸術性や社会性を根拠に表現行為の価値の多寡をはかろうとするものであり、また何ら法的拘束力も持たないものであって、決議内容にも決議した事実にも何一つ意味が無い。