判事曰く燃えよ組員?

ゴルフ場詐欺:組員ら2人に有罪判決−−地裁 /宮崎
宮崎地判平成24年5月21日判決。

 暴力団お断りの利用約款を持つゴルフ場で、暴力団員が暴力団員であることを隠してゴルフをプレーしたことが詐欺罪(2項詐欺)を構成するそうな。


 代金の支払われた契約で、「知っていれば売らなかった」(未成年者が年齢を秘して酒を買う、18歳未満の者が年齢を秘してエロ本買う、とか)だけでは財産上の損害がないことから詐欺罪を構成しないところ、その日ゴルフして帰っていくというサービスを暴力団員に給付することで一体どのように詐欺罪と構成したのか、判決文を読んでみたいところ。
 新聞の報道では、検「暴力団がサービスの給付を受けたことで信用・ブランドが失墜する」/弁「代金は支払われており損害がない」で争っていたようですが、要するに財産上の損害があるといえるか、詐欺罪の保護法益の内容を争っていたわけですな。


 組事務所の開設の目的を秘してマンションを借りる契約締結が詐欺罪になりうる(これについても争いはあるにせよ)として、じゃあ暴力団員が個人としてアパートを借りるのは詐欺罪になっていいのかというと、組事務所が出来上がる場合には、抗争等の危険があることから、他の住人が逃げ出したり新規が来なくなったりする可能性があって財産上の損害を認めてもよさそうなところ、個人が住もうとする場合には「あのマンションにはスジモンが一人住んでるらしい」で財産上の損害を認めるのは無理があるような気がする。
 じゃあ同じような判断基準でゴルフ場の使用を考えると、組の行事として組員で開催するコンペをとりおこなった場合には「あのゴルフ場は◯◯組が使っているらしい」と信用・ブランドの失墜を観念できないこともないとしても、暴力団員といえど日常の娯楽としてゴルフくらいするわけで、暴力団構成員が友人とゴルフに来ていただけでゴルフ場の信用・ブランドが失墜するとはちょっと言えねぇんじゃないかと。

 本件では、プレーしたのは組長、組員一人、風俗店経営、精肉会社役員、元畜産会社役員、介護ヘルパーの6人。「シマ」の関係者と遊びに来たのかな、くらいしか読み取れない。山口組系の組長って書いてあって、都城市の中心部っぽいから田舎としてはそれなりの勢力があるのかもしれないけどどちらにしても報道からはこれ以上読み取れないので何とも。報道内容までで刑法の試験に出たとしたら、財産上の損害は認められないとして詐欺罪の構成要件に該当しないと書かざるを得ないかな。被告人の反社会性を理由に拡張して解釈することはできないのだから。