たった7頁の粗大ゴミ:最高裁(笑)

番組のネット転送は「違法」=著作権侵害認める−テレビ局実質勝訴・最高裁時事通信
上判決全文最高裁

 ソニーの“ロケフリ”サービスは、名前のとおり“ロケーション”を問わずにどこでもTV番組を見ることができるようにするシステムである。TVアンテナのアンテナ端子と録画機に「ベースステーション」を接続することにより、家庭内どこでも無線で受信して番組を見ることができる(対応ハード・ソフトが必要)。また、ベースステーションをインターネットに接続しておけば、外出先でも(それが海外であっても)番組を見ることが可能になるサービスである。もちろん、見るためにはベースステーション固有情報およびIPアドレスが必要である。SONYロケフリnetwork(なお、このサービスは、地デジ化によって絶滅。ハードウェアは全て生産終了。)

 さて、被告である永野商店は、海外駐在等の間でも国内の番組を見たいという物好きなTV愛好家のために、まねきTVという有料サービスを始めた。その内容はといえば、契約者はベースステーションを購入して永野商店に置き、永野商店はこれをアンテナ端子とインターネットにつなぎ、電源をつけっぱにしておくというものである(ちなみに月5040円取られる)。これにより、愛好家たちは海外からでも日本のありがたいTV番組を見ることが可能になっていた。なお、録画していた番組は判決文最終ページ(7頁)。

 これに対し、NHK及び民放4社が訴えを提起。インターネットに接続された機器にアンテナを接続して「利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くこと」は、送信可能化権を侵害し、また「公衆送信権」を害すると主張した。

 原審(知財高裁)では、「いやそれ一対一通信だしベースステーションの所有者は利用者だし何が公衆送信よ」といって棄却したが、最高裁は今度は「ベースステーションに放送の入力をしている者は永野商店」「誰でも永野商店と契約できるんだから不特定多数への送信」(キリッ)という謎の理論で送信可能化権及び公衆送信権の侵害を認めた。

 これはでは、08年の原審の基準が“生きている判例”として基準になるかと思われたが、最高裁はこれを明確に覆した。この判断について、判事たちが電波による放送、インターネットでのオンデマンド放送とロケフリの仕組みをそれぞれ理解していたかどうかは怪しい。それは、7頁しかない判決文(うち判断理由3頁余)から推定できる程度のものである(原審は49頁のうち、送信可能化権についての判断理由に21頁を割く)。そしてその内容は上に挙げたとおりお粗末なものだが、それでもこの判決は拘束力をもって知財高裁に差し戻される。著作権等侵害についてはもともと知財高裁の専属的管轄ではない(東京高裁の管轄になる控訴審で、知財に関わるものがあれば知財高裁行き。今回は一審が東京地裁)が、知財高裁の判決を最高裁がテキトーな判決でひっくり返すというのは何とも後味が悪い。

 かくして、この判決は誰にとっても特にならない判例を作り上げてしまった。利用者は、高いカネを出して買った機器がゴミになったこと(もともと地デジ化でゴミになるのだが)と、大好きな日本のTV番組を見ることができなくなるという損をした。TV局は、いくらかの損害賠償金を得るだろうが、その番組を海外にいてまで見ようとしてくれていた貴重な視聴者を失った。そして、この勝訴によって視聴者が増えることも視聴率が上がることもない。最高裁は、この判決に関わった判事のうち次の国民審査を受ける2人につき、不信任票を少なくとも一票得た。

 参考として、池田信夫氏の去年12月のコラムへのリンクを貼っておきます。
 http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2010/12/post-266.php


 (おまけ)そういえば、テレ朝の訴訟代理人が広告費に定評のある某予備校の伊藤某でフイタ。一票の格差裁判でも名前を売ってるけど、これは評判落とすんじゃないか。