カセット式ウォークマン販売終了と音楽ビジネス

さよならカセット式ウォークマン…国内販売終了(読売新聞)

 2億台も売ったんだ・・・しかし改めてポータブルミュージックプレイヤーの歴史を振り返ると、MDが一番いらない子だったな。昔買ったけど。メディアが私的録音補償金のせいでバカ高かった記憶しかない。CDは基本的に借りるもんじゃなく買うもんだと考えていた(今でも考えてるが)ため、買ったCDの音楽をただ持ち出すためだけにMDを買う(そして私的録音補償金を払う)ことに違和感を覚えていた。そして、MP3プレイヤーが出始めた頃にすぐ買って使うようになった。

 CDをレンタル屋で借りてきて録音して返すという音楽の消費スタイルは、今改めて考えると謎に満ちている。レンタルして録音ないしリッピングして返すというのは、そもそもその音楽にカネを払う気がないというのに等しい。また、日本の場合CDは意味不明なほど高価で、可処分所得の少ない10代の消費者が大量に買えるものでもない。こうして、“データだけ手に入れば十分””タダで手に入るなら迷わずそこで手に入れる”という消費スタイルは当然のものと化していった。そして現状を見れば、iTunesの流行とファイル交換の横行が当然の帰結として現れている。

 今売るCDというのは、データはどこでも簡単に(たとえ違法でも)手に入れることができ、そして更に、ファイルだけ買えば1曲99セントとかで買えるのだという環境を前提にしなくてはならない。ランキングにいつ見ても同じ顔が並んでいたり、アニソンがちょくちょく食い込んできたりするのもこの環境が前提にある。特にアニソンなんかどこぞの動画サイトなんかに行けば削除しきれないほどアップロードされているわけで、PCや携帯でいつでも開いて見れるし、誰でもデータは手に入る。そして、『それでもCDを買おう』と思わせるものであるがゆえにCDが売れる。特定の固定ファンがいるアイドルグループも同じで、ここに共通するのは、コンテンツ自体に加えて、「現物としての所有欲」と考えられる。

 広く浅くみんなが聞く「流行りもの」をCDで買うという時代は終焉を迎えつつある。また、全世紀の頃のように、猫も杓子も同じ曲を聞いているという流行り方ももはや起こらない。そういうのはDLで済ませるべきもので、その一方で狭く深い需要を掘り返して売るのがCDのスタイルになるのでしょう。