鳩山迷走

 企業内部留保への課税検討=首相、共産委員長に表明
 唐突な内部留保課税案=「競争力そぐ」と産業界反発

 誰かこの頭のかわいそうな首相をなんとかしてください。

 ピラミッド構造になっている日本の産業構造。頂点である大企業による収奪が国民の所得の格差の原因となっていること自体は、間違っていない。しかし、内部留保が日本経済の成長力を損なっているとしている志位委員長の認識は致命的に間違っている。内部留保は将来への投資となるものである。将来の設備投資や研究開発のための資金として使われ、競争力を高めることで、それ自体が経済成長の原動力となりうるものである。株主への高い配当率が経済の成長率を損なうと言うならまだしも、内部留保が成長力を奪うという発想が一体どこから来るものなのか、正直理解に苦しむ。
 そしてもう一つ重要なことは、産業のピラミッド構造は上下関係であるとともに相互依存関係であるということである。内部留保(のうち例えば現金で持っている分だけでも)を労働者と子会社のために分散させたとして、その結果設備投資や研究開発に資金が回らなくなれば、頂点の大企業は一気にその座から滑り落ちる。頂点の凋落はピラミッド全体を揺るがし、仕事の来なくなった子会社も連鎖的に業績を悪化させて行くことになる。労働者と子会社のためのはずだった内部留保の切り崩しは、結局労働者と子会社へツケを回すことになりかねない。雇用の拡大につながるなどというのは妄想も甚だしい。
 二重課税であるだとか、現金で持っているとは限らないだとかの議論も結構。しかし、それ以前の問題として、内部留保への課税が本当に国民のためにプラスとなる政策と成り得るのかの検討をしたのかを志位委員長に問う必要がある。もちろん、計画経済化などというジョークを抜きにして、だ。


 そしてこの総理大臣である。もし鳩山首相が熟慮の上でそう言ったのならば、彼は日本を社会主義国にでも向かわせるつもりなのだろうということで、実に残念なことである。しかし、「鳩山さんは最後に話をした人の意見に染まる」などと言われるほど流されやすい総理。今回のこの件についても、志位委員長との会談で見事に染められて、何の考えも無しに「内部留保に適正な課税を行うことも検討してみたい」などと口走ってしまったものか。政府各所が慌てて火消しに動いたところを見ると、おそらく後者なのだろう。そもそもこれほど他人の意見に流されやすいということは、自分自身の明確な指針を持っていないことに原因があろう。そもそも鳩山首相からは、経済成長をさせようという意図が感じられない。財政を再建しようという意図もこれまた微塵も感じられない。彼はこのままでは、自分が何をしようとしているのかも分からないまま、日本を破産させる可能性があるだろう。こちらの方がよほど大きな問題であろう。