NHK原爆特番:核兵器はなくせるか?

 NHKの原爆特番。番組HPリンク
 一点を除いて、全体的によく作ったドキュメント番組だったと思います。

 被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の活動について。原爆による被害の大きさや恐怖を語るだけでは核兵器の無い世界は作れないということに、遅まきながらも気付いたことには重要な意味がある。ただ感情論を語るのではなく、実際にNPT会議で保有国の代表に働きかけ、また直接交渉によって保有国が核兵器削減のために何を求めているのか(例:パキスタン代表の、全核保有国が足並みを揃えるなら…などといった要求)を明確にするための活動が行われている。鼻が曲がるほどの政治臭(社会主義とか連合とかの臭いがプンプンします)がする上に感情論メインの原水協原水禁とは一線を画した現在の活動を継続するといいと思います。

 高校生の交流について。昨日の新聞記事によれば米国で原爆投下の正当性を信じる人の割合は未だ6割あるという。脳みその硬い退役軍人とかもう放っておいて若人に原爆の事実と核兵器廃絶を広めようという方針は良いです。高校生なら感情論で行くのも悪くないと思います。もちろんそれだけじゃ駄目ですが。

 核実験を止めさせた市民活動について。カザフスタン市民運動のほかに、ポリネシアでのフランスの核実験に対する補償の要求等の活動が紹介される。表沙汰になりにくかった核実験での被爆者の実態の一部も映像に組み込まれていた。これに関して番組構成上納得がいかなかったのは、現在進行形で被爆者を生んでいる新疆ウイグル自治区での中国の核実験と被爆がなぜ完全スルーだったのかという一点に尽きます。取材に行こうとすれば中国当局が妨害に来るかもしれないでしょうが、それもあわせて報道することで日本国内での市民運動を実際に起こさせる原動力となる位の気概あってこそのマスメディアではないのか。実験の無くなった地域の反核の唄を長々と放送する時間があるのならなぜ現在の実態を語らないのか。この点だけはNHKに猛省を求めたいと思います。