原初の夜

 NHKの特番でゴリラの話をみる。この山極という霊長類研究者の方は、大昔にみたTV番組で強烈なイメージが残っています。ゴリラと何年も暮らし、ゴリラと簡単な会話が出来るという霊長類研究の大家。ボス一頭に複数のメスと子供というゴリラの社会の基本が、ボスを含むオスの集団に複数のメスと子供というように変化しつつあるという話。二十数年ぶりの再会の場面で山極氏と向かい合うゴリラの目には、確かに知性の光を見たような気がします。

以下蛇足。
 昔、NHKに「生きもの地球紀行」という番組がありました。柳生博がナレーションやってたやつです。生物の生き様、生存競争、食物連鎖などといったものを容赦なく切り取った良質な映像と、それを損なわないシンプルで静かな解説・語り。あれ以上の生物ドキュメント番組はディスカバリーチャンネルにだってそうそう見当たらない。「堂々日本史」と並んで、NHKの良質番組の双璧だと思っています。子供向けっぽくないところも子供時代の自分にヒットしていて、上の山極教授の話を見たのも生きもの地球紀行でした。2回変更されたエンディングテーマのうち、一番古いものを今でも覚えているくらい印象の強い番組です。
 ただ惜しいことにこの番組、2000年代に入ると消滅してしまいました。後釜になった番組は、「地球!ふしぎ大自然」というクソ番組。ドキュメント映像の量が減り、語りの内容も”いかにも”な子供向け。挙句の果てにスタジオで草薙剛とか小泉今日子とかがいらん話を始めるんですよ。もうね、お前らの話なんていらんからドキュメントもっと映せと。生物の現実を擬人化して語るなと。柳生博呼んで来いと。
 そして現在では日曜に移動し、30分に短縮された枠で生きもの新伝説として継承。短くなったことでさらに内容は希薄に。もうね、その黄色いモリゾーとか何がしたいのかと。世界遺産紹介番組の車掌とかもいらない。あんな使いまわしキャラのためにあのアイデアの枯れた漫画家にいったいいくら払ったのかと。得るものが無いと思います。そいつら削除してドキュメント量増やせと。子供向け番組を見たがるような子供は最初からそんなチャンネル見てやしないって。

 「生きもの地球紀行」は、その娯楽性の低さゆえに上質な教養番組となっていたように思う。NHKは民放の欠点をまねるべきではない。唯一の、「広告屋ではなく視聴者の金で動く」放送局として、金払ってでも見たいと思わせるような番組を作っていってもらいたい。