平和の中で暮らしていると、物理的にも心理的にも、防衛力というものを軽視したくなるという。日本の場合はかなり深刻に進行していて、「戦力」などという単語自体がタブー視されるレベルにある。また、安全保障というものを自国とその周囲だけの平和と考えるような視野狭窄を起こしてしまうことがある。

 民主・平田議員「ソマリア沖で、日本の船舶が海賊から襲撃を受けて被害を受けたということがあったのか」


 この発言には二重の問題があります。一つは、上に挙げた安全保障の基準の間違い。公海上にいる国民の安全については知りませんよ、というのでは国家として失格と言わねばなりません。資源・エネルギーの大半と食料の過半を輸入に頼っている日本が公海上の安全保障に対して無関心でいいわけはありません。おまけに付け加えておくなら、海賊は手足の伸びる麦藁帽でもジャック・スパロウでもなくて、武装を強化した上で、船の乗っ取りという明確な敵意を持って近づいてくる不審船のようなものです。海保の巡視船では厳しいんじゃないでしょうか。

 もう一つは、この平田議員が政権獲得を目指す野党第一党の党首だということ。民主党が社民やなんかのご機嫌伺いをしなきゃいけなくて政策の方向性がまとまらないとかは仕方ないと思いますが(そもそも社民と組もうとか思ってること自体が間違いだと思いますが)、将来の政府の重鎮がニュースに疎いようでは困ります。BSのワールドニュースソマリアの海賊が出てこない週はありません。国内の新聞でも何度も載っているし、そもそも国会に最初にソマリアの海賊の議題を持ってきたのは民主党だったはずです。
 政権の獲得を目指すのが政党の存在理由とはいえ、政争に明け暮れて、いざ政権を取ってみたら肝心の政策はスッカラカンで世界の状況も何も知らない政府が出来上がる、なんてのは御免蒙りますよ。

 最後に民主党について言うなら、米国のオバマ大統領にあやかろうとしてCHANGEとか言うのはやめておいたほうがいいと思います。小沢氏はそもそも田中角栄金丸信ルート上の重要人物で、55年体制の申し子みたいなもの。小沢一郎の顔が象徴するものは変革ではなくて回帰なので、別のキャッチフレーズを考えたほうがいいと思いますね。