もう十数年前、まだ子供が携帯を持つなどということがほとんどなかった時代の話です。
 小学校のとき、通っていた塾で顔見知りになった女の子がいました。その子も中学受験をし、男子校と女子高と別々の中学へと進みました。中学生になって一ヶ月くらいになったとき、その子から突然、手紙が送られてきました。あんまり深く考えずに返信し、それから文通が始まりました。それから3年、実際に会ったことは数えるほどしかありませんでした。それでも細く長くその関係は続いたのでした。
 しばらくして、彼女は携帯を持ちました。いや、あの頃だからPHSだったか?ちょうど高校生がそんなものを持ち始める頃のことでした。番号を聞きましたが、結局その番号にかけることは一度もありませんでした。文通は少しづつ間が開くようになり、ついには途絶えました。ついには、とか言うと自然に止まったようですが、最後に送らなかったのは俺のほうだったと思います。年賀状のやり取りは続いていましたが、2年間の受験を経て翌年に送った年賀状は転居先不明で返送され、それも途絶えました。
 彼女がどこの大学に行ったのか、今どこで何をしているのか、まったく知る術がありません。おそらく二度と会うことは無いだろうと思います。もし今会ったら、今の俺を笑い飛ばしてくれるだろうか。






彼女の誕生日は2X年前の今日、10月20日でした。